NEETより厄介なTEET
学ぶわけでも働くわけでも職業訓練するわけでもない若者たち、「NEET」(ニート、Not in Education, Employment or Training の頭文字を取った言葉)が社会問題化しているが、それよりもっと数が多くやっかいなのが「TEET」だ。
「TEET」とは、アメリカ人の経営者と話していて思い付いた私の造語だが、Tentatively in Education, Employment or Training の略で、Tentatively(一応、とりあえず)、学び、働き、職業訓練している人たちだ。どの企業でもこの「TEET」に手を焼いている。どこに行っても常に腰掛け意識の、言わば“NEET以上プロ未満”の連中である。
少し景気が上向いて来て、企業は採用人数を増やすことはあっても、ギリギリ必要な人数だけしか採用しない。久々に新人を迎え入れた部署の上司は、「長い不況を経て、入社する人達も、皆、きっと気合が入っているに違いない。しっかり育てよう」と決意を新たにする。しかし・・・
新入社員は発光ダイオード型?
社会経済生産性本部は、2005年度の新入社員の特徴は「発光ダイオード型」だと発表した。電流を通す(ちゃんと指導する)とキレイに光る(いい仕事をする)が、決して熱くはならない(冷めている)という意味だ。発光ダイオードのように、少々コストはかかっても、半永久的にいい仕事をしてくれれば最高だ。
ところが、半永久的どころかすぐに部品交換が必要になる場合が少なくない。入社して間もなく、突如、「辞めさせて頂きます」と言って退職する「TEET」が増殖しているのである。「えっ、どうして?」と理由を聞くと、「留学します」、「資格を取ります」、「作家を目指します」などと、突然、自分の夢を語る。「3年は社会人経験を積んでからの方がいいんじゃないか?それならどうして入社したんだ?」と言っても、「思い立ったら吉日と言いますから」と辞めてしまう。
先日も大手企業の部長が集まる勉強会に講師としてうかがった時もそんな「TEET」の話題で盛り上がった。「フジテレビの『あいのり』を見て私も旅に出たくなりました」と言って辞めたとか、銀行に就職した東大卒のキャリア女性が「私、やっぱり菊川玲を目指して女優になります」という言葉を最後に翌日から来なくなったといった呆れて物も言えない冗談のような新社会人が実際にいるのである。
“とりあえず人生”の繰り返し
そしてその後、そういった連中が初志貫徹で頑張っているのかなと思っていたら、しばらく経って消息を聞くと、その夢はどこに行ったのかまたどこかに就職している。“とりあえず”就職して、“とりあえず”夢を追い掛け、また“とりあえず”転職する“とりあえず人生”を繰り返しているのだ。
そんな「TEET」の口癖は「こんなはずじゃなかった」である。やるべきことをやらずにやりたいことだけをやって生きて行けると勘違いしている、飽きっぽく打たれ弱い夢見る夢子ちゃんだ。簡単に言えば、子供なのである。子供の心を持った大人ではなく大人の外見をした子供。暦の上の年令は大人でも精神年令は子供のまま。私の別の造語で言えば、“コドモのオトナ”を略して「コトナ」である。
こういった「コトナ」に振り回されてはたまったものではない。「コトナ」が入って来ない、「コトナ」をのさばらせない、企業文化を育んで行くより他に方策はない。
(フィナンシャルジャパン 2005年7月号 執筆記事に加筆修正)